*悪夢。*

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 何を取り出したんだろうか……  星がまばゆく瞬く満天の星空の微かに青み掛かった暗闇も手伝って、男性が取り出した物の詳細を知ることは出来なかった。  列車がトンネルに差し掛かり、点々と設置されている蛍光灯のようなランプによって小刻みに照らされる車内。  照らされた車内に俺が見た物は、さっきまで無表情だったはずが、不気味な笑顔を浮かべて変わらず俺を見ている男性の姿だった。  その手には小さな注射器。  中にはしっかりと液体が充填されていて、打ち込む準備も万端だった。 「なんですか、やめてください」  恐怖に震える俺のか細い声なんてこれっぽっちも耳に入っていないのか、男性は俺の腕をとり、注射器を皮膚に近付ける。
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