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ある晴れた日の曜日。
見渡すかぎり緑の牧草地である。草をのんびりと喰む羊たちが思い思いに寛ぐ様は、まさしく牧歌的。
がろがろがろがろがろ……
そんな中、最寄りの村へと続く一本道をカークランド家の馬車が二台、進んでいた。
「お天気で良かったねぇ~」
「えぇ、本当に」
その後続の馬車の御者台に、菊とフェリシアーノは座っている。
穏やかな気候の会話なのだが、実のところ、世間話などというレベルの声量ではない。
馬車とは移動の為に絶え間無く騒音を発生させ続ける乗り物である。よって、すぐ隣の同僚と何か話そうと思えば、がなる寸前のヴォリュームで声を張る羽目になるのだった。
ちなみにルートヴィッヒは先頭馬車の方に居り、一人寡黙に景色を眺めている。
「ヴェー、弾むはずむ♪」
「舌を噛まないようにお気を付けて!」
街中と違い舗装されていない田舎道だ。
クッションが悪く揺れの激しい馬車の、しかも車輪の真上に座っているのである。殆ど掴む物の無い御者台で、二人の身体は上下に放り出されそうな程にバウンドしていた。
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