六月某日

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 「あ、あぁ。云ってなかったか?プレゼントを選ぶんだ。アルの誕生日が近いからな」  「どうして、私を?」  「あいつ、去年俺がやった玩具を三時間で放り出してな…物は大事にしろっての、散々悩んで選んだってのに!」  思い出したらまた腹が立ってきたらしい。腕を組んで頬を膨らませる。  「で、だ。歳の近いお前なら、あいつの欲しそうな物が判るんじゃないかと思ってな」  なんて重大な役目。  こころもち顔を強張らせて俯いた菊に視線を合わせるようにしゃがみ込んで、アーサーは笑う。  「そう身構えなくていい。アルの奴も、お前が選んだと聞けばきっと喜ぶ」  「でも」  「菊。控えろ」  何か云おうとした子供の肩をぽんぽんと叩いてルートヴィッヒがたしなめる。  口をつぐんで非礼を詫びる菊の顔は、もう年齢不相応に落ち着いた、いつものもので。  少し残念だな。  そう感じる自分を不思議に思いながら、アーサーは立ち上がる。  「よし、まずは向こうからだな」  とりあえず、とやって来た玩具の売り場だけでも結構な広さで。  眩暈を覚えた菊だったが、何処か楽しそうに見て廻る主人の後ろ姿を眺めていて、知らず微笑んでいた。
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