92人が本棚に入れています
本棚に追加
「近くで見てもむっちゃ可愛えぇなぁ。俺、アントーニョいうねん。きみ名前何ていうん?中国人?」
屈託の無い質問と笑顔に、うろうろと視線を彷徨わせ困惑していた菊だが、アーサーが応える許可を与えたので、ようよう口を開いた。
「本田菊と申します--日本人です」
「うわ、しっかりしとんなぁ!ロヴィーノなんか、これ位の頃はろくに返事も寄越さんかったのに」
「悪かったな…」
それまで黙っていた背後の従者がぽつりと呟き、菊はさらに驚く事になった。
その子供の反応に気付き、アントーニョと名乗った青年が苦笑する。
「これ、うちのフットマンのロヴィーノ。アーサーんとこのフェリシアーノちゃんと双子やねんけど…」
ちょい、きかん気でな。
暗に『似てない』と仄めかす彼に、双子の片割れはむすりと不機嫌な表情のままだ。
いつも無駄に朗らかで、ふわふわした笑みを絶やさないフェリシアーノを見慣れている為か、同じ造作のロヴィーノの怖い顔は違和感の塊みたいで。
「……」
同じ事を感じているのか、ルートヴィッヒも眉を顰めている。と、場の雰囲気を変えるようにアントーニョが声を上げた。
最初のコメントを投稿しよう!