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「あ、そうや。さっき見掛けたんやけど」
売り場の前方を示して首を傾げる。
「東洋から入れた物、向こうに一杯あったで。けど俺、何に使うんかさっぱりでなぁ」
「ふーん?」
「菊ちゃんなら判るんちゃう?時間あるんなら見せたったら良ぇわ」
「お前はもう帰るのか」
「残念やけどな。あー、もうちょっと可愛ぇ子を堪能したかったわー」
「変態め…」
「純粋な愛情表現やんか。なぁ菊ちゃん」
返答に詰まる子供の頭をぐりぐりと撫でて、アントーニョは笑う。
「見世物みたいで嫌かもしれんけど、それは自分が可愛ぇからやねんで?」
「あ、あの」
「見せびらかしたいー、いうんは主人にしたら当然の情やさかい、堪忍したってな」
悪戯っぽい口調で茶化され、アーサーはにやりとした青年の背中をステッキで思い切り引っ叩いた。
「ってめ、とっとと帰れ!」
「はいはい、仰せのままにー」
またなー皆によろしくなー。
明るく手を振り去ってゆくアントーニョの後ろ姿を睨みつけ、深々と溜息を吐いて。
「ったく、あいつは…」
肩を落とすアーサーだった。
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