六月某日

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 「あ、そうや。さっき見掛けたんやけど」  売り場の前方を示して首を傾げる。  「東洋から入れた物、向こうに一杯あったで。けど俺、何に使うんかさっぱりでなぁ」  「ふーん?」  「菊ちゃんなら判るんちゃう?時間あるんなら見せたったら良ぇわ」  「お前はもう帰るのか」  「残念やけどな。あー、もうちょっと可愛ぇ子を堪能したかったわー」  「変態め…」  「純粋な愛情表現やんか。なぁ菊ちゃん」  返答に詰まる子供の頭をぐりぐりと撫でて、アントーニョは笑う。  「見世物みたいで嫌かもしれんけど、それは自分が可愛ぇからやねんで?」  「あ、あの」  「見せびらかしたいー、いうんは主人にしたら当然の情やさかい、堪忍したってな」  悪戯っぽい口調で茶化され、アーサーはにやりとした青年の背中をステッキで思い切り引っ叩いた。  「ってめ、とっとと帰れ!」  「はいはい、仰せのままにー」  またなー皆によろしくなー。  明るく手を振り去ってゆくアントーニョの後ろ姿を睨みつけ、深々と溜息を吐いて。  「ったく、あいつは…」  肩を落とすアーサーだった。
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