いらない子

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冷えきった家庭内。 父と母の夫婦仲は、最低の状態だったんだと思われる。 気付けば私が4歳の時に、母は出ていった。 母よりも女を選んだのだ。 「瑞姫…?ちゃんとお父さんの言う事を聞くんだよ?」 それが母の最後の言葉。 私には二人の兄がいる。 当時で10歳の長男と、8歳の次男は泣いていた。 何故泣いていたのか、数日後には私にも理解出来たが遅かった。 そこからは、父と二人の兄との3人暮らしが始まる。 母っ子だった私には苦痛な日々。 父との会話が苦手で、何かあっても伝える事が出来ない。 小学生になったある日、ぞうきんを持ってくるようにと言われた。 「お父さん…。」 「何だ瑞姫?」 「あ、明日…。」 「声が小さい!明日がどうしたんだ!?」 男手一つで3人の子供を育てるのは大変なんだろう。 父はいつも疲れていた。 そして苛々していた為、口調も荒く小心者の私には、それだけで言葉が出なくなってしまう。 「…。なんでもない…。」 「なんでもないなら話し掛けるな!父さんは忙しいんだ!」 「…ごめんなさい…。」 その為、学校で叱られる。 「瑞姫ちゃん?どうしてぞうきんごときも持って来れないの?」 「…。」 「瑞姫ちゃん?聞いてる?」 「…うん。」 「明日はちゃんと持って来るのよ?」 だが父に言い出せない私は、次の日もぞうきんを持って行かない。 「どうして瑞姫ちゃんはそうなの!?」 怒りを表す先生。 「…。」 だんまりを決め込む私。 「よお!お前ん家貧乏だからぞうきんもないんだろ?あっはっは!」 「あっはっはっは!」 教室中が私への罵声と非難の笑い声が響いていた。 (黙れ…黙れ…。) 唇を噛み締め、それに耐えた私。 そんな事が何回か続き、クラスに馴染めないまま、過ぎていく毎日。 誰とも喋らない。 放課中はいつも一人で絵を描いたりして過ごす暗い子。 学校がつまらない。 (行きたくない。) ずっとそう考えていた。 (何で私ばかりが…。) 毎日毎日悩んでいた。 そんな幼少時代に、根暗と言うイメージを植え付けられていたのだった。  
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