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だいたい…なんで私がこんな人間の下につかなければならないかと言うと私がおそらくこの地上で最も嫌悪する存在、父忠男(タダオ)と兄充(ミツル)のせいだった。
父、兄だと言う事実も消し去りたいが…
とにかく、私は男という人種が滅びればいいと思うぐらいに(奴らが原因で)嫌いになっていた。
「奈留…朝ご飯は?」
私の袖をつまんで引っ張りながら眠い目をこするこの男は御堂さな(ミドウサナ)である。
この小動物のようで実年齢と身体が比例していない男が私は一番苦手だった。
「さな様…朝食でしたら食堂にご用意してあります。」
いわゆる天然と言うやつなのだろう。
彼は、まだ寝ぼけていたが納得したのか食堂とは反対の方向に歩いていった。
しかし、私はそれを止めることなく次の仕事へと移った。
私が物心ついた時、私の側には父と兄しかいなかった。
どうして母がいないのかと聞くと、父は決まってこう言った。
「お母さんは他の男と出て行ったんだよ。」
父は空気の読めない男だった。
そのことを聞いた私はもちろんショックを受けたが、今になったら母は当然の行動を取ったのだと思うようになった。私が逆の立場でも同じ行動を取るであろうが、私だったらあんな愚かな男と子を育むなんてことは例え命を計りにかけられたとしてもNOと結論づけるだろう。
「橘様…起きて下さい。」
ご主人様達の部屋の掃除もメイドの仕事だ。
ご主人様が学校に行った後に部屋の掃除を行うのだが…最後のご主人様である橘要(タチバナカナメ)がなぜか布団にくるまって寝ていた。
カーテンが閉じられていて部屋が暗かったので私はカーテンを開けた。
しかし、橘様は布団にくるまってピクリとも動かない。
本当にいつもいつもいい加減にして欲しい。
私だって学校があるから早くして欲しいのに…
「橘様…学校に遅れてしまいます。起きて下さい。」
そうして私が布団の上から彼を揺さぶると舌打ちが聞こえてきた。
私の顔が盛大に引きつる。
舌打ちしたいのはこっちだ!!
しかし、私はそんな怒りを抑えながら再び声をかける。
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