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「橘様…もう一度言います。学校に遅刻されますから起きて下さい。このままでは橘様は遅刻常習犯に貸せられる罰が与えられてしまいますよ?」
私とご主人様達は皆同じ学校に通っている。
やたらと長ったらしい名前で金持ちばかりが集う学園だ。
あの学校ほど社会の縮図と言えるところはないだろう。
まるでインドでいうところのカースト制度のような…
金や才能がある人間は優遇され…そうでないものは虐げられる。
とは言ってもそんなにおおっぴらにではないが…
とにかく蜜華様が同じ敷地にある大学に通っておられて、名執様と御堂様は高等部3年生で、私と橘様は二年だ。
しかし、同じ二年でも私のクラスは下の下。
この学園は幼稚舎から大学院まであり、金があればエスカレーター式で上がれる。
高等部はS、A、B、C、D、Fクラスまであるが、私はただの一般人だし…なによりプライドの高い連中に良い成績をとって注目されるのが嫌だった。
だから私はわざとテストの点を赤点をとらないギリギリのラインに留めていた。
この男のせいで私まで遅刻常習犯呼ばわりされるのにはなれたが、これ以上とばっちりを食うのはごめんだ。
何よりも気にくわないのが、遅刻常習犯に対する罰をこの男は受けないのに私だけが罰せられることだった。
しかし、私は耐えて耐えて…
そして耐え忍んだ。
いつあのセリフを口にしてしまうのかとヒヤヒヤする時もあるが、まだなんとかなりそうだ。
「橘様…失礼します。」
もうこうなったら最後の手段しかない。
私はそう思い布団を剥ぎ取った。
黒髪で白い肌。
切れ長の目の下には妖艶な黒子がある。
橘様は布団を剥ぎ取った私をただ冷たく睨んだ。
「橘様を遅刻させるなと橘様のお母君様からきつく申しつけられていますので…ご無礼とは思いましたが、最終手段をとらせていただきました。」
橘様に睨まれることなど日常茶飯事なのでもうなれたが、あの目に見つめられると正直恐怖を感じることもあった。
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