蜜柑

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ただでさえ狭い道は道路の両脇を覆う木々で更に圧迫感を感じる。日が長くなったとは言え空は段々と薄暗くなり木々で覆われるこの場所は薄気味悪く感じた。 山頂にさしかかると辺りを覆っていた木々がなくなりそれは見事な夕焼けを車のフロントガラスに映し出していた。 こうゆう事があるから辞められないんだ。 運転席のウィンドウを開けタバコを吸っていると視界の端に人影がある事に気付く。色鮮やかなマウンテンバイクに股がり片手には荷物をかかえ夕日を眺めている。背格好からして中学生のようだ。 この峠道を一人で登って来たのか。 僕自身小学生の頃に一人自転車を走らせ峠を登った事がある。なんの目的もなかったがあの頃はそれが楽しかったものだ。それを思い出すと僕はふと少年に話し掛けてみたくなった。
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