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「やあ、こんな所まで自転車で来たのかい?すごいなあ君は。」
車を降りて夕日に黄昏る少年に話しかけてみた。夕日を眺め黄昏る。渋い大人なら画になりそうだがここにいるのは渋い大人とは程遠い少年だ。黄昏る画が余計にシュールに見える。そんな事を考えていたものだからついつい笑いを含んだ声で話し掛けてしまった。
いきなり話し掛けたにも関わらず少年はこう切り返す。
「ねえ、おじさんは蜜柑好き?」
視線を夕日から逸らさぬまま僕にこう言い放った。こちらを見ないのは失礼だな。そして僕はまだ二十代だ。おじさんなんかじゃない。態度と口振りはまだ子供だからとしても質問の意味が分からない。蜜柑?あの皮を剥いて一総ずつ食べる蜜柑?
「あ、ああ。蜜柑は好きだよ。甘くて美味しいしね。それより何故今蜜柑の話をしたんだい?」
少年は夕日に向けていた視線をこちらに移しあどけない笑みを浮かべた。
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