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屋敷の近くにある大木、そこにはまるで美しい人形に色鮮やかな着物を着せたのではないかという位の少女がいた。
そう、彼女が逢坂家の長女である綴だ。
彼女は決まって大木に寄り添う…。
まるで、己自身の一部であるかのように。
「…………」
寄り添い座って目を閉じる。
誰にも邪魔されない独りの時間、彼女はそれが大好きなのだ。
「姉さん?」
うたた寝をしてる所へもう一人、美しい少女がゆっくり歩いて来る。
それが彼女の妹である結だ。
合わせ鏡のように二人は似ている。いや、似すぎていた。
初見ならば見分ける事は難しいだろう。
だが、二人は唯一違うものがある。
それは、瞳の色だ。
姉である綴は光を飲み込むかのような漆黒の目を持ち、彼女の目の前へ歩いて来た妹の結は木や土のような茶色の目だ。
この瞳の色に気づかねば見分けられないであろうという程この姉妹は似ていた。
「どうしたの…?」
眠っていた瞼がゆっくり開かれた。
「うん、そろそろあの日だな…って」
自然風が二人を撫でていき黒く美しい髪が揺れた。
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