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その日は熱のせいか、全てが虚ろに揺れていた。
記録、記憶を辿って思い返してみれば、その日は酷く熱く、酷く生き苦しい日だったとも覚えている。
この場、この時において、この文字で構成された文章を君が見ているという事は、きっと何らか経緯を持って、もしくは何一つの因果も無くコレを手にしたという事なのだろう。
ならきっと僕に求められる事は、何かを綴り語る事だ。
しかし果たして、僕にエンターテイメント性や純文学性に富んだ物が書けるかは甚だ疑問絶えない所。
それでも良いと頷いて頂いた方や、まずは初めてみろよと背を押してくれた方々のために、僕はまず、あの夏の日々の事を伝えたい。
今となっては荒唐無稽、事実無根で、絶対に掴めない行き着けない、そんな空を想っていた人間の話なのだから、これは一つの空想話。
時間の無駄かもしれない。
大いに無駄だと思う。
得るものも無く、
選るものは無い。
つまりは終わってしまった話。
虚実と夢幻を追いかけ、真実と現実からは目を背け、やがて涙を流しては墜ちていく人間達の話。
大団円など縁もない、ただ泣いて、ただ鳴いて、そして何より救いようが亡い、虹を掴むような――これはそんな話。
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