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「あの2人も着いて来るんじゃあない?」
「いや、中谷に『お前を艦長に任命する』と言えば来ないだろう」
「んーー、難しいね。あいつら絶対嗅ぎつけるよ」
林の傍の浜辺には、新婚のテントに、少し離れて中谷、近藤用のテントが設営されている。その真ん中に小さな臨時レストランが建っている。
薄手のトロピカル風の布をまとった給養隊の女性隊員が、手際よく南国のカクテルを作り、それをトレイに載せて、2人の横まで来た。
「お待たせしました。シーサーカクテルです」
緑色をしたカクテルをテーブルの上に置いた。
「ありがとう」
ウエイトレスの布の隙間から、小銃の銃口がチラッと見えた。
「おい、美千代、小銃を装備しているぞ」
「夜中に、花火変わりに打ってくれるんでしょう」
「じゃあ、イージス艦からミサイルが乱舞されるのか?」
「かもね」
「そりゃあ、凄い、100億円の花火は聞いた事ない。ギネスもんだなあ」
「この新婚旅行自体、ギネス記録でしょう。イージス艦の警備の元とか、数万年先でもないでしょう」
山下が、緑色のカクテルを一飲みした。
「なんだこれー、草、草、草の味がするだけ」
「あー、それ、ゴーヤと海ブドウと泡盛のカクテルよ、健康にいいから頼んだの、美味しいでしょう」
美千代も一口飲んだ。
「ん、おいしいじゃない……」
「こんなのが主食?」
「そうよ、私はベジタリアンなの、人間って元々草食動物なのよ、肉なんて体の毒!」
「肉、魚、食べないの」
「ちょっとだけならね。普通は食べないよ」
「あー、知らなかった」
山下は、頭を抱えた。
「何、その態度、今日は新婚旅行でしょう!」
「ごめん、ごめん」
山下は、草の味しかしないシーサーカクテルを、目を閉じて全部飲み干した。
「そう、それでよし」
山下は美千代が見えない方向で、ウエっと小さく言った。
「泳ごう!」
美千代はサングラスをベンチに置いて、海に走り出した。
「ほんとうに我がままなんだから、俺、酒飲んでいるのに……」
山下、ゆっくりと起き上がり、一、二、三、四……と両手を大きく広げ、体を大きく回している。
美千代は、海に飛び込みもうクロールをしている。
美千代は立ち泳ぎをしながら「早く来なさいよ!」と叫んだ。
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