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朝、日暮里といつもの待ち合わせで待っていたら、航が紙袋を持って現れた。
「アニキ、おはようございますッ!」
「よっ、航」
「………おぉ」
仏頂面で返ってきた言葉に、日暮里が目を丸くした。
そんな日暮里を余所に、航がいきなり俺の前に立ち、持っていた紙袋を押し付けてきた。
「航?」
俺が目線を合わせようとすると、顔を背けてぶっきらぼうに言った。
「………学ラン。それ無ぇと学校行けねぇだろ」
それが紙袋の中身。
普段より低めの声で、俺の目を見ずに言う航に、思ったのは。
─………かぁーわいい。
口に出したら殴られるか蹴りを1発貰うから黙っとくけど。
仏頂面の顔を背けて唇を尖らせて言う時の航は、照れているのだ。
それを俺は知ってるから。
─そんな耳まで真っ赤にして言われても、ちっとも怖くない。
それに、航らしい。
ありがとうも何もないけど、学ランにはしっかりアイロン掛けもされている。
言葉がなくてもちゃんと伝わるんだ。
だから俺も、両腕を航と日暮里の肩に置いて。
「…部活、行こうぜ」
「…おう!」
「はいッス!!」
歩き出す。
どういたしまして、なんか言わなくたって、航には伝わっているから。
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