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着いた先は屋上だった。
雲ひとつ無い快晴の空に少し気分が浮上する。
だが、そこにはやはり先客がいた。
「よっ、木山」
「…月森か」
今朝のやり取りが嘘のように、わざとらしくおちゃらけると、
背を預け、両腕を手すりに引っ掛けている木山が此方を向いた。
「航ならいねぇぞ」
どうやら俺が此処に来たのは航だと思っているみたいだけど、違うんだよな。
「………俺か?」
反応しない俺に、木山が汲み取るように言った。
ビンゴ、今はお前に用があんの。
「あのさぁ、単刀直入に言うけどさ。…俺があんま気ィ長くないの知ってるでしょ?」
「そうだな」
「昨日のカモメとか今朝とかさ。………アレ、わざと?」
お得意のスマイルで相手に聞けば、ふぅ、とため息を吐き。
「そう取りたいならそう取って構わない」
どっち付かずな答えが返ってきた。
まるで、『そんな事を聞く為に俺に用があったのか』とでも言いたげだ。
「…マジに答えてくれないとこっちも困るんだけど」
「至って素面だ」
埒が明かない、そう考えていると、逆に木山が口を開いた。
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