君は僕の太陽5

3/3
前へ
/130ページ
次へ
「今のお前に航は無理だ」 「………はぁ?!」 憮然とした態度で言われりゃ流石に象った笑顔も崩れる。 コイツの意味深な言葉の意図を探ろうとするが、全く掴めない。 先程よりも長くため息を吐き、木山は言った。 「二兎を追う者は一兎をも得ず、って知ってんだろ。今のお前はそれだ。お前は【今の状態】が心地好すぎて壊せねぇんだ。…違うか」 「…あー悪い。…全っ然意味わかんねぇんだけど」 「そうじゃねぇだろ。お前の場合、理解しているがしてねぇフリをしてるだけだ」 図星だった。 だけど此処で退く訳にはいかない。 航の事をどう思っているか、俺ばかりが根掘り葉掘り聞かれているから。 「お前にとって、航は何なの?」 少し瞬きをして、やがて慈しむように目を細め、 「航は特別だ」 と言った。 「…あっそ」 これ以上この場所に居たくなくて、俺は錆びかけたドアノブを廻すと、 「航なら裏庭だ」 これまたムカツク返事が返ってきて、ブッ壊す勢いでドアを閉めた。
/130ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加