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「はっ、…ハァ……」
ガラにもなく心臓が鳴り響いて落ち着かない、落ち着く訳がない。
ごくり、と生唾を呑んで、航を見下ろす。
─キスしたい。
その柔らかい唇に食い付いたらどんなに美味しいだろう。
─めちゃくちゃ、したい。
薄く開いた唇から舌を捻じ入れて、甘い舌を隈無く堪能したい。
そして煩わしいその厚い学ランとシャツを脱がしたら、晒された肌はきっと綺麗だ。
─欲望のままに、いっそ奪ってしまおうか。
そんな声が、聞こえた。
手を顎に掛けると、
遠くから、チャイムが鳴った。
目の前にはゆっくりと開かれる茶色の瞳。
「………りょーすけ?」
「…ん、おはよ。航」
寝ぼけ眼に舌っ足らずな声に、ぎゅうと抱き締めた。
「りょ、すけ?」
「何でもないよ。ただ航が可愛かっただけ」
「………おれは女じゃねーぞ?」
これ以上、航の口から溢れる前に、強く抱き締める。
「りょーすけは甘えん坊だなぁ」
「うん。だから甘えさせて」
仕方ねぇなあ、と航は拙いながらも両腕を俺の背中に回してくれた。
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