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君は僕の太陽8
それから一週間後。
俺は完璧に航への直接的な接触を避ける事に成功していた。
会話している時に、航が近づいて俺に触れようと手を伸ばせば、敢えて気付かぬフリをして俺からぐしゃぐしゃと髪を撫でてやる。
すると、髪が乱れるのを嫌がって航から手を振り払って離れていく。
こんな事をずっと繰り返していた。
…俺の中の熱が冷めるまで。
だけど一向に熱は冷めてくれない。
それどころか、触れない分ますます肥大していった。
まぁ取り敢えず今日の登校もオッケー、朝練も授業もそつなくこなし、あとは放課後の部活だけ。
日暮里も普段と変わらずじゃれていたし、航も特に気にした様子はなかった。
そして部活の休憩中、俺は水沢にバランスのコツを教わっていると。
航が此方に近づいてきて、俺の腕を取った。
「なぁ水沢。…コイツちょっと借りていいか?」
「えっ?…うん、良いけど……」
水沢も何か引っ掛かったのだろう。
歯切れ悪くも許可はしたが、俺も聞き間違わなかった。
─航の『コイツ』呼ばわりは、その相手に対して怒ってる証拠だ。
航は人の纏う空気に敏感だ。
だから他の誰よりも真っ先に駆け付けるし、助けたりもする。
「なーに航、俺が水沢に取られてヤキモチ焼いちゃった?」
「ちょっと来い!」
俺の言葉を無視して引っ張られた。
冗談も受け付けない、航の声に俺は一人苦笑いした。
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