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連れて行かれたのは誰もいない部室だった。
俺は航に掴まれた腕を投げるように壁際に叩き付けられ、胸ぐらを掴まれた。
航はケンカの頃以上に目をギラつかせていた。
早い話、物凄く怒っていた。
「…テメェ本気でふざけんなよ。俺ならバレねぇとでも思ったか」
やっぱり。
頭の中の俺が客観的に傍観しながら俺に囁いた。
「一体何の話、ッ」
「とぼけんな…!!」
一段と低い声が耳に入り、俺は身動いだが、目の前にいるコイツは許さなかった。
「俺だけに目も合わさない、話も聞かない、避けて離れる……。…言えよ、俺に対して何かムカついてんだろ、なあ亮介!」
胸ぐらを掴んだ両手を更にきつく握った。
少し息が苦しい。
「………俺、お前に何かしたんだろ?何かしたから俺の事避けるんだろ、離れるんだろ?…だったら面と向かって言えよ!逃げてんじゃねぇよ…!!」
息が荒く、ぶるぶると震える拳を白くして握り締められる。
目の前が霞んだが、それよりも航が心配だった。
─いくらでも、殴られてやるのに、そんな堪えてる表情されたら、胸が痛い。
「…こっちだって訳わかんねぇのに…、……そんなん、されたら………っ」
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