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「…航。部活行かねぇのか」
「おう木山!」
俺と航の間に入ってきたのは木山。
コイツと航は中学からの付き合いで、最近新体操部に入ってきた。
普段は誰ともツルまず話し掛けても二言目で会話が終わるような一匹狼だが、航だけは特別らしく、話さずとも常にその目線は航の方に向けている。
「今行こうとしてたんだよ。今日も気合い入れて行くぞーっ」
「ハメ外して転けんなよ」
「ったりめーだろ!誰がそんなヘマするかよ」
「…フッ」
「んだよその笑い方!」
そして航を見る両眸は普段の鋭さが嘘のように柔らかく降り注がれる。
「先行ってるぞ」
「おー。っしゃ亮介、俺達も行くぞ」
「ああ。……な、航」
「ん?なんだよ」
「木山にとって、航は特別なのかな」
「俺のダチだからな!」
俺の問いかけに自慢気になる航を見てほっとしてる自分がいる。
だがそんな安堵も次の瞬間、あっさり崩れ去った。
「特別、か…」
「航?」
「アイツが特別って思ってくれんのは嬉しいな」
言葉が出ない俺に航はさっきと同じ笑顔を俺に向けて。
「へへっ。木山の特別って、すげぇ貴重かも」
まるで宝物を見付けたような顔をして。
「……航……」
胸がズクリと痛んだ。
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