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君は僕の太陽3
結局あの後、俺も航も一言も交わさずずっと一緒にいたんだけど。
夜の海辺はやっぱり寒く、航がくしゃみをして慌てて身体を離して俺の学ランを着せて、脱ごうとする航を宥めて全速力で逃げて帰路についた。
親のいない家の玄関で、ドアに凭れてズルズルとしゃがみこむ。
「………ハァ」
マジで危なかった。
あのままいて、もし航が振り返って此方を見てしまったら。
「…確実に襲ってたな」
航の抱き心地は女の子と違って筋肉もついてがっしりしてるのに、華奢だからすっぽり収まって、不思議な感じがした。
シャンプーだって土屋の銭湯にあるやつだから俺と同じ筈なのに、どこか甘い匂いがして。
航から腕を触られたら、そこからじわっと熱くなって、でも決して煩わしい熱さじゃなくて寧ろぽかぽかするような心地好さだ。
それを離したくなくて、でも離さなきゃいけないと迷走していた時に航がくしゃみをしたから。
「良かった、って言いたいのに。…俺」
─あのまま閉じ込めて自分だけを見て、なんて。
…そんな女の子、ウザいだけって思って断ち切ってたのに。
今の俺はまさしくそれだ。
「…ハハ、俺今まで女の子に対してどんだけサイテーな事してたんだろ」
本気になったら。
やっぱり向こうにも自分だけを見て欲しい。
航はどんどん好きなことや、夢中になれるものとか増えていくから。
…他人も、航に惹かれて集まってくるから。
苛々は一旦落ち着いて俺も新体操に入部したけど。
「………セーブ出来なくなるかも」
抱き締めてしまったら落ち着くかなって思ったけど、全然足りない。
心地好すぎてそれ以上欲しくなる。
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