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「沙耶ちゃん?」
一階のロビーで熱帯魚を眺めている沙耶ちゃんに、声をかけた。
「……あぁ!ジェジュンくんかー!一瞬、誰かわかんなかった!」
帽子にメガネにマスクという不審者のような僕を見て、クスクスと笑う。
「なに?カゼでも引いたの?」
「うん、そう。起きたらのどが痛くて……。沙耶ちゃんは?」
「私はお見舞い。知り合いが入院しちゃってさ」
軽く立ち話をしていると、「今日は久しぶりの休日なんだ」と彼女がもらした。
「なんか予定あるんですか?」
「え?」
「……ヒマなら、ごはん付き合ってくれませんか?」
深く考えずに、僕はランチに誘った。
ちょうどお腹がすいてたこともあったけど、もう少し話していたかった。
「え、でも……」
沙耶ちゃんが遠慮がちなそぶりで返す。
「時間ない?」
「ううん……」
「あ、2人でなんてマネに悪い?」
「いやいや、そうじゃなくて……。カゼ、平気?具合悪くないの?」
…―なんだ、そっちかぁ。
「ぜんっぜん大丈夫」
彼女の気遣いにほっと胸をなで下ろし、僕らは院内にあるカフェに入った。
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