第1章 * 告白の罠

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 夕日が色を加える事もなく、ただ静かな放課後の教室。 窓際の自分の席に立って、目の前の男子の言葉が終わるのを待つ。 ――そして、短く流れる沈黙。 返事に期待と自信を待つ 彼の目を見ながら、 私は口を開いた。 「ごめん。私、 その顔 無理だから。」 その言葉は空気を変えた。 目の前の彼は、 ただ目を丸くして、 ぽかんと口を開いている。 何度も見てきた表情だった。 きっと彼らは、 生まれて初めて自分の顔を けなされたに違いない。 だから自信もあったし、 期待もしたんだろう。 放心状態の彼を置き去りに、 私は教室を出て玄関に向かう。 ――急がないと。 待っている人がいるから。  
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