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prologue
一陣の風が僕を追い越していく。
僕はこの景色を知っている。
それは視界的なものであり、今では視界的なものでない。
何となく心当たりがあるだけのもの。
でもそれは、明白なものであって、確かめる術のないもの。
そんな矛盾した心持だった。
そこには、一人の少女と一人の女性。
手を取り合う姿からは、親子のように見てとれた。
この光景は僕にとって何を意味しているのかは判らない。
でもその光景は、見ているだけで心が温まった。
再び一陣の風が吹く。
その風は僕の目の前で止まり、僕を見つめるや無言でまた駈け出したかのように様に通り抜けていった。
そんな事が僕の、いや、僕達の物語の始まりだったんだ。
風の天井を駆け上がると同時に、僕は夢から覚めた。
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