第一冊「出会い風」

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それに僕には両親がいない。 その理由も何故かと聞かれれば分からない。知らぬ間に僕は一人ぼっちになってしまっていた。 死んだのかもしれない。 僕を置いて出ていったのかもしれない。 僕の周りには謎が多すぎる。  周りから話される事もなく、訊かれる事もない。 況してや、誰がこの事実を知りえるのかも僕には分からないのだ。 そして、僕がその事を思い出そうとすると、警報装置が作動したかの様に頭が割れる様な痛みに駆られ、視界が赤く染まるのだった。 僕が覚えているのは幼稚園の年長の時に叔父さんに引き取らた時からの事だけ。それと、目の事で少しの間入院していた事だけだ。 そして、高校二年生になった最近になって夢を見るようになったのだった。 さっきも言った通り、僕は夢について気になり始めた。 そんなある日、僕は何気なく夢の事を叔父さんに話した。 すると、何故だろう。 叔父さんはその話を聴くのを躊躇ったのだった。叔母さんも何やらやるせない様な雰囲気を放っていた。 知っている事があれば話して欲しかったけど、叔父さんはそれを拒み、口を開こうとはしなかった。 それからだろうか。 僕が叔父さん達との間に溝を感じ始めた。 会話は見違える程減り始め、時間と共に何枚ものカレンダーが剥がされていった。
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