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「非常識的でないものはすべて夢だと決めつけるのは、人間の悪い癖でチュ。私を作った人間も、言っていたのでチュ」
人形はしたり顔でそう言う。
「……あいつか」
渋い顔で男は呟く。
あの、底の知れない、常ににへらとした顔を思い出す。
普段そんなでありながら、戦闘時になると何の躊躇もなく、人を殺す男だった。
「所詮俺達が住んでいる世界は表側。それは裏の世界を含んでの事。俺達が生きている常識と、他の奴等が生きている常識が異なるように、きっと俺達とは全く異なる常識で生きている奴らだっている筈だ。それに、常識に囚われてばかりでは、発明家はきっと何も発明出来なかっただろうよ……でチュ」
その言葉を聞いた途端に男は押し黙る。
確かに、今まで自分が過ごしてきた日常は、一般的な常識とは異なる。
異なるが故に、今の言葉に何も言えない。
「……ちっ。仕方ない」
舌打ちをひとつすると男は拳銃をホルスターへ戻し、装備を整え始める。
別の場所に転移してきた、としてもここで押し問答しているよりは、自分の足で探した方が早いと思ったのだ。
「何をしているのでチュか?」
人形が背中を向けて、なに作業をしている男に話しかける。
「見たらわかるだろ。装備を整えているんだよ」
「装備? 何故ですか?」
「無論、今からここを調査するからだ」
そう言って男はリュックを担いで立ち上がり、外を目指して歩き始めた。
「あっ! 待つでチュよー!」
そんな男の後を追いかけて、人形も走り始めた。
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