何処の誰ともわからぬ者、何処と分からぬ場所

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社を出た男は周囲を警戒しながら、森の中を進んでいく。 ゆっくり、ゆっくりと慎重に。なにが出るか分からないのだ。 人形が動き出す場所。だったら何か得体の知れない化け物だってでてくる可能性はある。 手には自動小銃。名称はM4オプションはグレネード、光学サイト。 当然、口径は5.56NATO弾。これで何とか装備は足りる。 大半の敵ならグレネードでかたがつく。 静かに森の中をを移動していく。勿論、人形も一緒だ。 ちょこちょこと男の後ろを付いて行っている。 しかし、身のこなしは中々うまい。 この人を食ったかの様な話し方と、身のこなしから考えるに、性格はあのオタク野郎に似たらしい。 ……妙な所にこだわる。 深緑の森の中、一人と一つはゆっくりとだが確実に先へと進んで行っている。 しかし、何も出ない。 少しは期待をしたのだが。人じゃ無い生物が出て来る事に。 ついでにそいつらと戦闘になる事が。 そっちの方が人間を殺すよりも何倍も面白い。 道なき道。ただ歩くだけ、まっ直ぐに。 一応は元の場所へ帰る為に糸を垂らしている。 かの有名なミノタウロスを退治する時に使った方法だ。 尤も、男が使っている糸は、ナイロン製だ。 神話とは全く違う。生贄にはされたくないし。 「んー、誰にも会わないでチュねぇ」 後ろで人形が愚痴る。 それを聞いた刹那、響き渡る声が一つ。 「きゃああああぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!」
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