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男は人殺しを生業にしている、と書いたが、その正体については誰も知られた事は無い。
いつの間にかいて、いつの間にか殺されていた。
その多くは拳銃による射殺が主だが。
九ミリの弾丸というのは、警察でも使われている。
つまり、紛失した拳銃を使われているのではないのか、と疑われるのだ。
しかもそれによって連続的な殺人。
それこそ、国家の威信にかかわる。
だから、表向きには何もなかった風に振る舞っている。
死んだのは、彼らにとってどうでもいい人間であるから。
この生き方を覚えたのはいつだったか。もう忘れた。
昔はやたらめったら当たり散らしていた事だけは覚えている。
怒りで引き金を引き、憎しみで刃を振り下ろしていた。
そんな事もしていた事があった。
今となっては懐かしい思い出だ。
今となっては生きるためだけにその引き金を引いている。
そんな彼が何故か大事にしている物がある。
それはとても彼に不釣り合いで、決して似合うなんて言葉は出ない代物。
ぬいぐるみ、だ。
ゼノなんたらというゲームに登場するピンク色の、もふもふとしたまん丸のぬいぐるみ。
昔、オタクの知り合いにもらった代物だが、何故か彼の言葉が忘れられずに大事にとっているのだ。
「この人形を持っていればもしもの時に役に立ってくれる」
そう言われて今まで大切に持って来たのだ。
もしもの事なんて起こる事は無い、もし起こったとしてもその時は覚悟している。
こんな生き方をしてきたのだ。
きっと名前なんて知らなくても、恨んでいる事だろう。
まぁ、どうせ犯人なんてでっち上げている事だろうが。
死ぬときは死ぬときである。
しかし、この人形は見れば見るほどに生きているように見える。
重さだってそこまで大きくは無いのに、結構な重さもある。
まるで内臓が詰められているかのように。
不気味だと思う反面、何故か魅力を感じてしまうのは、互いに不気味な存在であるからだろうか?
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