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魔力が使用できない場所……?
眉をひそめて、男は続ける。
「場所は変わっていないぞ。どういう事だ」
「どういう事だと聞かれてもねぇ……。多分、空間が違うんじゃないのかな」
「空間? どういう事だ。外の景色が変わっている事と、どう関係している?」
「ああ、やっぱりそうだったのか。つまり、元いた場所とは違う場所に移動したってことでチュね」
「社を抱えて俺ごと、か? そんな事をして一体何の得があるんだ」
「得なんて関係ないのでチュ。これは起こるべくして起きたこと。誰の意思でも無い、必然が引き起こしたもの」
「必然? つまり別の空間に移動したという事は、誰の意思でも無く自然に起きた事だと?」
「そうでチュ」
しきりに頷いて満足そうな顔をする人形。
だが、男はただ不機嫌になるばかり。
それもそうだ。突拍子のない話を聞かされて、それを唐突に納得しろ、といわれても彼はそれが出来るほど、柔軟な頭をしていないし、何より彼自身がSFじみた事を信じる訳がない。
「ふざけるな。下らない三流小説じゃあるまいし」
怒気を孕ませた口調で、男はそう言った。
「巫山戯るも何も、現実におこってしまった事は信じないと」
「現実? これがか? こんなものはたちの悪い夢だ」
「胡蝶の夢って知っているでチュか?」
「どちらが夢か現かと? だったら俺は此方が夢だ。こんな非常識的な事が起こり得る筈も無い」
男がそう言うと、人形は彼の言葉から今ここが何処なのか気がついた。
(ははーん。成程、常識と非常識、夢と現……となればここはあそこしか無いでチュねぇ……)
内心、笑いながらそれを口にしようしない人形。
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