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伊「和沙君にね、ちょっとお願いしたい事があって!」
和「お願い…、ですか?」
俯いていた顔をあげ、不安気な様子で二人を見た。
伊「えぇ、今からこの人の家に行ってお酒作って来て欲しいのよ。」
和「へっ………?!」
予想外の事に情けない声を出してしまう。
目を丸くし、意味が分からず呆然とする。
伊「実はね、この人の我が儘なんだけど、よく私がお酒を作りに行ってあげてるのよ。」
オーナーが軽く笑って、隣に立つ男を見た。
伊「けど、今日は私も今度のクラブのイベントの打ち合わせで忙しいから行けなくて…。
だから和沙君にお願いしたくて!
この人も和沙君の事気に入ったみたいで、どうしてもって!」
和「はぁ、……俺、ですか…?」
伊「まぁ、
出張バーテンみたいな?
帰りはタクシーで送ってもらえばいいし、これは個人的な依頼だからちゃんとバイト代と別でお給料もらえちゃうけど、どうする?」
和「や、やりますっ!
俺でいいならやらせて下さい。」
お金の話しを持ち出され、つい即答してしまう。
我ながら現金な奴だと思うが、ただ2~3時間お酒作って話しの相手してお金が更に貰えるなら、いくらでもやる。
それに、相手も俺を“男”だと思って依頼してる訳だし、やましい事ないじゃん?
こんなおいしい話しないだろ!
気持ちは意気揚々とし、目を輝かせてしまう。
こんな容易な考えが仇となる事をこの時は知らなかった-…
和沙のこんな表情を二人が黒い笑みで見ていたなんて-…‥
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