-現実-

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 見た事のない場所に動揺を隠せない。何とかその前の事を思い出そうとし、すぐに恐ろしい記憶を抹消する。  思い出してはいけない。思い出してはいけない。  自分にそう言い聞かせて、残ったのは懐かしい人の顔。 「―――翼宿?」 「なっ、なんやっ?今の悲鳴は?」  騒音を撒き散らして翼宿がやってくる。 「……翼宿」 「おっ。美朱、やっと起きたようやな」「あたし…どうして。ここは?」 「わいの家―――つーのは嘘で。 閣山におるみんなの家なんや。で、ここまで連れてきたわけ」 「家?」  消えてしまいそうな声で呟き、周囲を見回す。あまり綺麗とはいえない室内。足元には散らかったままの服やゴミ。ふ と視線を下ろすと、だぼだぼな服を着て布団の中にいた。どうやら翼宿が着替えてくれたらしい。「お前突然寝てもうてさぁ。ったく。幸せ太りでもしたんちゃうか?」 「ふっ!?太ってなんかないよっ!―――あ」  ムキになって言い返すと、翼宿は微笑を浮かべて美朱の頭を撫でた。 「分かっとる。ほんのジョーダンや」 「もうっ」 「―――いつもの美朱やな」 「え?」 「いや。なんでもない」  踵を返し、軽く手を左右に振る。
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