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2枚の硬貨をそっと財布に戻したところで、先程の店員が戻ってきた。
しかし店員の手に俺が求めるものはなく、首を傾げ、困惑した表情でこちらを見る。
「申し訳ありません。先程までは確かにあったんですが、どこに消えたのか在庫がなくなってしまっていて」
「消えたって…」
求人誌が消える?しかも在庫すべてゴッソリと?
ありえねぇだろ!
あまりの事に呆然とすると、怒ってるとでも思われたのか、店員が慌てて頭を下げる
「本当に申し訳ございません!」
深々と頭を下げられると、それ以上は何も言えなくなる。
釈然としないが、ないなら仕方がない。
店を出ると冷たい風が肌に突き刺ささった。
「さみぃ…」
心も体もついでに財布までも寒い。
マフラーに顔を埋めて、俺は宛もなくトボトボと街を歩き始めた…。
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