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その日は、朝から雨が降っていた。
吐き出す息は白く、もうすぐ春だなんて信じられないほど寒かったのを覚えてる。
そんな雨の中、親父達は出掛けていった。
何回目だかの結婚記念日だからと、頬を染めながらまるで初々しい恋人同士みたいに手を繋いで。
“いい年して恥ずかしい奴らだな”
そう言って、ろくに顔を見ないまま俺は親父達を見送った。
―…まさかそれが、親父達と最後の会話になるなんて思いもしなかったんだ。
人はいつか死ぬなんて分かり切ってる。
だけどそれが、こんなに早く訪れるなんて想像もしてなかった…。
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