終わりと思ったら始まりで

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―正直。 それから先の事を、俺はよく覚えてない。 兄貴と一緒に病院に行き、2人並んだ亡骸を見てもまるでテレビを見ているかのようで現実感が無かった。 葬式の時も弔問客が来たら機械的に頭を下げ、挨拶するだけだ。 学校の友人らも来てくれた気がするが、よく覚えてはいない。 ―そして出棺の時。 最後だからと、親父とお袋の顔を見るように兄貴に促された。 よくドラマなんかで、こうゆう時眠ってるみたいだなんて感じてるが、俺はよく出来た作り物だと思った。 触れた手に伝わる2人の肌の冷たさが、降りしきる雨のより冷たかったことだけが妙にリアルだった。 …俺は、まだ一度も涙を流せていない。
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