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「つまり……この傾いた状態があなたにとって正常で、外にいると気持ち悪くなる、と?」
俺の質問に、彼女はゆっくりと頷いた。
「普通は、めまいがするようになるとからしいんですけど、私はこうなってしまったもので」
「だから、家から出られないんですね」
それじゃあ彼女は妖怪でも変人でもなんでもない、困ったハンデを抱えた哀れな美女じゃないか。
家から出たら気持ち悪くなってしまうんじゃ……人と触れ合うこともできない。
まだ若いのに、この傾いた屋敷に閉じこもるしかできないだなんて。
「どうせ出られないから、周りから何を言われようと平気だと思っていたんですけどね……やっぱり、たまにぐさりとくるものがあります」
「でも、好きでそんな体になったわけじゃないんでしょ? みんな事情を知れば」
こんな美女が困っているなんて、俺だったら放っておけない。
下心? 上等、俺は健全な男子だ。
そこに困った美女がいたら手を差し伸べたくなるのが男のサガってやつだろう。
ところが、吉村さんはゆるゆると首を振った。
「それは嫌なんです。なんだか、同情を誘っているようで」
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