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「あなたのように聞きに来る人が居れば答えますけれどね。でも、そんな人はめったに居ませんから」
両手でティーカップを持って、左手でそれを愛おしそうにそっと撫でながら微笑んだ。
この人は今自嘲している、そう感じた。
「ティーセットだって無駄に5人前ありますし、このテーブルだって5人がけです。誰も来ないのにね」
……この人は寂しいんじゃないのか。
やっぱり、若い女性がずーっと部屋に閉じこもったままだなんて普通じゃない。
本来なら、友達と遊んだり、恋したり、そういうことを楽しむ年齢だろう。
「ねえ、気味が悪くありませんか? こんな家。それと、私」
儚げな笑顔のまま、そう聞かれた。
「最初は不気味だと思ってましたけど、吉村さんと話したら真逆になりました」
彼女を守るためのお城。
しかし同時に、他人を寄せ付けない要塞にもなってしまった。
常に迎え入れる準備はできていたのに。
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