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俺の発言に、彼女は嬉しそうに目を細めた。
「森さん……でしたっけ。もし良かったらまた私の話し相手になってくれませんか? やっぱり、人と話したいので」
「もちろん。俺なんかでよければ」
話しているうちに、この家の傾きにもだんだん慣れてきた。
意外と、いけるかもしれない。
吉村さんの気が少しでも晴れるなら、俺は何度でもこの家に通おう。そう思えてくる。
「ああ、ありがとう、嬉しい。お手伝いさん以外と話したのなんてすごく久しぶり」
まるで少女のような笑顔を見せる。
こんなに綺麗な人なのに、閉じこもったままでしかいられないだなんて本当に勿体ない……神様は不公平だ。
「やっぱり、あのたまに出入りしてるおばさんってお手伝いさんなんですか」
「そうです。お手伝いさんが色々食材を買ってきてくれたり、外のことを教えてくれたりしてくれるんです。でも……」
そこまで言って表情を曇らせた。
10分程度で出てくるらしい、という話だし……きっと、お手伝いさんもこの傾きに耐えられないんだろう。
「やっぱりこの家の傾きがだめみたいで。すぐ気分が悪くなっちゃうんです。森さんは平気なんですか? 若いからかな」
「全然平気っすよ。あはは、若いからかな。まだ20の若造なので」
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