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「あら、あんまり変わらないんですね。私は21です」
そう言って、ふふっ、と声を出して笑った。口許は手で軽く押さえて。
本当に、仕草がいちいち上品な人だ。
「そうなんですか? もっと上かと思いましたよ」
「あれ……私、老けて見えます? やっぱり外の流行とかには疎いから……」
「いやいや、そうじゃなくて。大人っぽいって意味ですよ」
少しだけしょんぼりしてしまったので、慌てて言い直した。
育ちのよさを窺わせる吉村さんは、実年齢よりずっと大人びて見えるんだ。もちろん、良い意味で。
同じ大学の女の子はどちらかとおしゃれな子が多い。
だけど、吉村さんは全体的に落ち着いた雰囲気で物静かな感じだ。
今もシンプルな淡い空色のワンピース。
裾にさりげなくあしらわれたレースがいいワンポイントになっている。
決して趣味は悪くないだろう。変に着飾るよりはこっちのほうがずっと似合う、と思った。
「一応テレビとか雑誌は見てるんですけどね……服も通販で買えますし」
「充分似合ってるしいいセンスだと思いますよ。うん、可愛い」
素直に称賛する。これはお世辞じゃないし別に口説いてるわけでもないからいいだろう。
彼女はちょっと照れたように、ありがとうございます、と言った。
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