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「特に結婚願望もありませんし、関係ないんですよ」
あはは、と軽く笑い飛ばしているものの、本当にそれが彼女の本心なんだろうか。
女性だったら、そういう夢を見るものなんじゃないのか。
しかも、彼女はそれを自分の仕事に選んだくらいだ。
本当に興味がないのだとは思えなかった。
「……紅茶、おかわりします?」
ティーカップの中身は、いつのまにか空になっていた。
余計なことを考えながらちびちび飲んでいたせいか、最初に味わったものがどんな味だったかを思い出せない。
小首を傾げて訪ねてくる彼女の穏やかな表情が、なんだか切なかった。
「いえ、次来た時にとっておきます。また来ますね」
「……ふふ、じゃあ、楽しみに待ってます」
俺は、帰ることにした。
一度頭の中を整理したかったからだ。
楽しそうな彼女の笑顔が、網膜に焼き付いて離れない。そんな気がする。
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