13人が本棚に入れています
本棚に追加
/57ページ
「素敵ですね。みんながそうならいいのに、人って悪い所を指摘するほうが楽しい生き物ですから」
「ま、そうですね。良い所って、ひっくり返すと嫉妬したくなっちゃうこともあるから」
その言葉に、彼女からの返事はなかった。
ただ寂しそうな目のままで、ほんの少し首を傾けるだけ。
やっぱりまだ周りが怖いんだろうか。
彼女が果たしていつからこの家にいるのかなんて俺は知らない。
生まれつき? 最近? 10年前?
もっと仲良くなって、全部さらけ出して欲しい。
いつのまにか俺は、そう思うようになっていた。
彼女の淹れてくれた紅茶に、ミルクだけを入れてかき混ぜてから口をつける。
一昨日忘れた味が、もう一度口の中に広がった。
渋みの少ない、上品な味だと思った。
「んー、やっぱ美味しい。紅茶ってあんま飲んだ事なかったんですけどね」
「それはよかった。なんなら、少し茶葉を持っていきますか?」
最初のコメントを投稿しよう!