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さっきまでの寂しげな瞳が嘘のように、華やいだ笑顔を見せる。
「えー、でも。紅茶とか淹れた事ないし……やっぱ吉村さんが淹れたのがいいです。また来ますからお願いします」
「あははっ、うちに紅茶飲みに来てるんですか?」
「違いますよ。吉村さんに会いに来てるんですってば。紅茶はそのー、美味しいけど、2番目」
ほんっとどうしてこの人はいつも自分を下げるんだ。
いや今のは俺の言い方も悪かったかもしれないけど。
冗談にいちいち自嘲を混ぜてくるのがなんだか切ない。
紅茶も含めて、吉村さんの魅力の一つじゃないか。
「えっと、これも……よかったらどうぞ」
揃えられた白い指が、クッキーの皿を指す。
お言葉に甘えてまずは一つ頂くことにした。
小さくて丸いそれには砕いたアーモンドが混ぜ込んであるようだった。
さくさくと軽い食感に、アーモンドのカリカリとした食感がアクセントになる。
甘さは控えめで、紅茶のお供にちょうどいい。
「わー、これもすっごい美味しい」
「ほんとですか?」
「ほんとほんと。自分のボキャ貧っぷりが切なくなるほどに」
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