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  「そういえば、吉村さんのデザインしたものとか見てみたいかもしれないです」 「え、えぇ? でも、ウェディングドレスですよ……? 男の人が見て楽しいものじゃないと思います」 あたふたする吉村さん。 うん、普段の俺だったらウェディングドレスとか興味ないよ、全く。 でも、吉村さんの仕事……吉村さんのデザインしたものだったら、見てみたい。 彼女の好きなもの、彼女の世界を見せて欲しかった。 「駄目ですかー?」 「うっ……ちょっと待ってて下さい。持ってきます」 彼女は立ち上がると、そのまま逃げるように部屋を出ていった。 恥ずかしいんだかなんなんだか分からないけど、持ってくると言った以上は持ってきてくれるんだろう。 その間、ぐるりと部屋を見渡す。 席を立ち、ぴっちりと閉じられたレースのカーテンを軽くよけてみた。 窓枠に対して、外の景色が傾いでいる。 この家が傾いでいるからなんだけど……なんだか錯覚するような、違和感のある光景だった。 これが嫌で、カーテンは全部閉じられてんのかな…… 吉村さんにこうしている所を見られるのも気まずいので椅子に再び腰かけたとき、ちょうど戻ってきた。  
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