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それから、なんとなく気まずい空気が流れた。
駄目? どうして。
手術すれば治るかもしれないなら、それは駄目とは言わないでしょう。
でも、そんなことを言う権利が俺にはないような気がして言えなかった。
彼女の抱えた痛みを、投げられた心ない言葉によって付けられた傷を、本当に分かっているのは彼女自身だけだ。
つい最近出会っただけの俺が、無神経なことなんて言えるはずもない。
「持って、きますね」
何かを押し殺したような語気で、主語のない台詞。
それを放ちながら彼女は立ち上がると、また奥へと消えていった。
傷つけてしまったんだろうか。
何か力になれるんじゃないか、っていう俺の思い上がりが。
頭を抱えると、思わず大きなため息が漏れた。
俺がため息なんかついてどーすんだよ。
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