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「悪い今から俺吉村さんち行ってくるわ止めるな今すぐだ」
言いながら部室を出る。
クッキーはまだ余っていたけど、きっとあいつらが食べきっておいてくれるだろう。
後ろから何か言われたような気がするが気にしない。
重要なことならメールなりなんなり入れてくるはずだ。
いきなり気になって会いたくなるなんて、滑稽な話だと思う。
だけど、止まらなかった。
俺はいつのまにか走っていた。
すれ違う人や追い抜いた人たちが俺に怪訝そうな目を向けているのがわかる。
そんなのどうだっていい。
早く、彼女の顔が見たい。
ほどなくして到着。
走ったせいで荒い息のまま、吉村家のインターホンに手を伸ばした。
――あ。
昨日、あんな気まずい別れ方をしたままだった。
もう一度ちゃんと謝るべきだ。
深呼吸して、息が整うのを待って、少しだけ覚悟して――インターホンを鳴らす。
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