5.

5/9

13人が本棚に入れています
本棚に追加
/57ページ
  『はい』 この数日ですっかり聞きなれた、上品で優しい声。 そのたった一言だけど、いつも通りに聞こえてちょっとだけ安心する。 「あのっ……俺です、森です。昨日はすいません」 『あっ……』 インターホンの向こうの彼女が息を飲むのが分かった。 もしかして、俺に来て欲しくなかった? 来ると思っていなかった? 俺にしては珍しくネガティブな憶測がぐるぐると回る。 こんな気持ちになるのは初めてだ。 彼女に会ってから、俺の中も何かが色々変わっていっている気がする。 『……今、開けます』 たっぷりと開けられた間のあとに、細い声が返ってくる。 また形容しがたい音とともに、門が左右に開いた。  
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加