5.

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  彼女は額のあたりを両手で押さえて俯いている。 体を強張らせ、華奢な肩が上がっていた。 「す、すいませんっ! 勝手に開けたりして……!」 「いえっ、私が、トロいから……大丈夫ですっ。あはは……」 そう言って、吉村さんは顔を赤くしながら笑って後ずさる。 ――怒って、ない? 彼女はおずおずと目線を彷徨わせながら、胸元に手をあててこう言った。 「それよりごめんなさい、あのー……私こそ、昨日は変な態度とって」 「いや……俺が、変に突っ込むから」 まさか逆に謝られるとは。 てっきり、昨日はプライバシーに踏み入りすぎて嫌われたかと思った。 それから少しだけ途切れる、お互いの言葉。 吉村さんはすっと顔を上げて俺の目を見据えると、ふわりと頬を緩ませる。 「もう……来てくれないかと思いました」 それは、待ちわびた瞬間が訪れたような、願いが叶ったような、そんな……柔らかな笑顔だった。  
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