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ぴんぽーん。
外からインターホンを押した時独特の小さな音がする。
これで某三分間ファイターよろしくデュワッ! とか言われたらギャグにもなっただろうが、ごく普通のありふれたインターホン音だった。
少ししてから、がちゃりという音の後に女性の声が返ってくる。
『……はい』
おお、喋った。
この屋敷の主人は女性だったのか。
「突然すいません。僕はこの近くのA大に通う、森と申します。吉村さんにちょっとお話を伺いたいことがあるんですが」
とりあえず身分を明かすのは礼儀だろう。
出だしでコケたら、得られる情報も得られなくなってしまう。
屋敷の主人は暫く黙っていて、もしかして切られたか? と思い始めたころに返事が返ってきた。
『何の話でしょう。長くなりますか?』
「えーっと……ちょっとサークルで研究してることがありまして。ここの近所の人に色々話を聞いてるんです。長くは……なるかもしれません」
『それなら、この家は抜かした方がいいです。お上がりになって、と言いたくても御覧の通り傾いてますから……気持ち悪くなりますよ』
即答された。
どうやら、傾いている事が異常であるとは認識しているらしい。
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