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  それから、暫くして。 「わ……日差し、強いですね」 「帽子とか無いんですか? あったら被ってたほうがいいかも」 「うう、ちっとも外に出ませんでしたから……帽子はひとつもないんです」 俺は彼女の家まで迎えに行っていた。 厳密には、傾いだ本宅ではなく、もしもの時のためにと建てられていた、『正しい傾斜』の離れに。 それにはある程度は慣れたらしいものの、未だに外へ出ることを恐れていた。 まるでつり橋を渡るのに怯える子供のように家のドアにしがみつく彼女の手を握って、外に連れ出す。 「俺も、被せられそうなのは持ってないや……それじゃあ、日陰を選んでいきましょう。駅まではすぐそこですし」 「はいっ」 握り返してくれた手が暖かい。 軽く引いたそれに倣って、彼女は『外』への一歩を踏み出した。 「ところで、行くところってどんなお話のあるところなんです? 怖い話ですか? 変な話?」 「んー……ちょっと変な話かな。でも、俺の知ってる一番変な話よりは、変じゃない」 「なんですか、それ。よく分からないですよ? ……森さんの知ってる『一番変な話』って?」 「変なお屋敷に住んでた、美人さんの話……ですかね? まだ終わってないけど、俺としてはハッピーエンド希望、かな」  
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