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彼女は美人だというのに、鉄面皮を崩そうとはしない。
笑えばきっと素敵なのに本当に勿体ない。
まるで綺麗な彫刻のように無表情のまま、事務的に告げられる。
「気持ち悪かったら帰ってくださいね。私の家に来たせいで体調を崩されても困るので」
「はい、大丈夫です」
靴を脱ぎ、それをすぐに揃える。
相手は俺より年上で大人だ。
一応、きちんとしないといけない。
彼女に促されてついていくが、家の中もやっぱり豪邸だった。
両手を広げても廊下の壁に触れないくらい広い。
それに、調度品のレベルの高さが財力を窺わせる。
家にこもりっぱなしじゃ仕事はしてないんだろうし……何者なんだ、この人。
「どうそそこに。それでは紅茶でも淹れてきますね。座っていてください」
「い、いえお構いなく……」
そこに、と示されたテーブルとイス。
なんだか床と比べるとさらに傾いているような……いや違う、こっちのほうがましなのか?
もはや分からなくなってきてしまった。
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