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「梶先輩、書類のチェックお願いします」
最近入った可愛らしい新人の女の子に、声をかけられた。
「わかった。昼休みまでには目を通しておくから」
と言って、私は書類を受けとった。
こうして上司に書類をチェックしてもらうことに、かなり緊張しているのか、書類を受けとった時、かすかに手の震えを感じた。
「よろしくお願いします」
私は、深々と頭を下げてその場を立ち去ろうとした彼女を引き止め、ランチに誘った。
「書類を返すついでにと思ったんだけど、先約があるならいいからね」
「いやっ、問題ないです。ご一緒させてください!」
彼女は緊張を崩さず、少し頬を赤らめた。
初々しいなぁと思い、微笑ましかった。
私にも、こんな時代があったっけ。
そう思うと、もうお世辞にも新人と言えないどころか、ベテランの域に入りつつある自分が、なんだか悲しく思えた。
私ももう、若くない。
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